3.和音感で探る「Zadok the Priest」の前奏部分
ヘンデル:ジョージ2世の戴冠式(1727年)のためのアンセムより「司祭ザドク」(HWV258)
「UEFA(欧州サッカー連盟)チャンピオンズリーグのアンセムの原曲」なのだそうだ。
一見シンプルな和音ばかりに見えるが、この長めの前奏には物語性を感じる。第1ヴァイオリンのアルペジオ(+他パートの違う音)からコードシーケンスを解析しつつ、妄想力を発揮してみた。
[前段]
レファ♯ラレ(D)[神の調であるDから]→ミソシミ(Emだが前のコードの影響でEm7の色があって温かい)→ミラド♮ミ(Em+5 add4)[敬虔な感じ]→ファ♯ラレファ♯(ファ♯ラレミ:F♯m7 +5の一部というか、このミの色も前のコードの影響か)[晴れやかな感じ]→
ソシレソ(G)[(G調は生命感を感じる)人の世をすっきりと見据えた感じ]→ラド♯ミソ(A7)[7コードにはパワーを感じる]→ファ♯ラレファ♯(ミ)/レソ♯シレ(D add9のようなA6 sus4からDdim6のようなAM7 sus4 add9)→ド♯ラミラド♯…(A)
[ここまで、温かく神聖な光に包まれて、根音(と調性)の階段をゆっくり上り、神(D)の祝福を受けて玉座(A)に]
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[後段]
ラド♯ミラ(A)[玉座についた王(このAコードはmajesticな印象を受ける)]→シレファ♯シ(Bmだが前のコードの影響でBm7の色があって温かい)→シミソシ(Bm+5 add4)→ラミド♯ミ(A)[Aから見た上空Bが敬虔な色に染まっていて、天使達が王を祝福?]
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レファ♯ラレ(D)→シレソ♯シ(D6)[6コードにはスピリチュアルなものを感じる]→ド♯ミラド♯(A)[神(D)から王(A)にお告げ?"God said unto the King"というフレーズかもしれない]
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ミシミラ/ミシミソ♮(Esus4からEm)→ミド♯ミソ/ミファ♯ド♯ファ♯/ミファ♯ド♯ミ(Em6からEm6 add9)[このEmのシーケンスは、これから王が立ち向かうことになる困難の予言?]
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レファ♯シレ(D6))[6はスピリチュアル]→ラレファ♯ラ/レファ♯ラド♮(DからD7)[7はパワー][神が加護を約束?]
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シレソシ(G)→ソシミソ(G6)[人の世(G)の精神性(6コード)を感じる]
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ラド♯ミソ/フ♯ァラレファ♯(A7からDの構成音のA6 sus4)[王(A)のパワー、神の光に照らされ]→ラミレミ/ラミド♯ミ(A sus4からA)[sus4からメジャーコードへの解決は、'70sポップス等でしばしば遭遇する、明るい希望を感じさせる鉄板モチーフだ]
そして、合唱が戴冠を讃えて祝祭へと続く。 以上のようなストーリーと共に、伝説の英雄などを思い浮かべて聴くと、合唱の歌い出しで感極まる。この解釈、いい線いっていそうな気がするのだけれど。
そう言えば子供の頃、D7コードを覚えた時に、なぜか突き通るようなパワーを感じて「取り扱い注意」だと思った。不思議だ。